記事の目次
- そもそも「特定小型原付」とは?
- 特定小型原付の主な条件(一覧表付き)
- 電動自転車や原付と何が違う?わかりにくい分類を整理
- 特定小型原付の運転ルール
- 違反するとどうなる?罰則や注意点
- 購入前に確認したいポイント
- 特定小型原付の今後と活用例
- 【まとめ】
2023年の道路交通法改正で「特定小型原動機付自転車(特定小型原付)」という新区分が登場し、電動キックボードや電動自転車との違いに戸惑う人も多いはず。この記事では、特定小型原付の定義から、他の乗り物との比較、必要な免許、交通ルール、注意点まで、交通ルールを守って安全に乗りたいあなたの疑問を解消します。


2023年の道路交通法改正で「特定小型原動機付自転車(特定小型原付)」という新区分が登場し、電動キックボードや電動自転車との違いに戸惑う人も多いはず。
この記事では、特定小型原付の定義から、他の乗り物との比較、必要な免許、交通ルール、注意点まで、交通ルールを守って安全に乗りたいあなたの疑問を解消します。
「特定小型原付」とは具体的にどのような乗り物を指すのか、その定義から見ていきましょう。
特定小型原付は、2023年7月1日に施行された改正道路交通法によって新設された車両区分です。正式名称は「特定小型原動機付自転車」といいます。これは、これまでの原付一種(50cc以下の原動機付自転車)とは異なる、新しい位置づけのモビリティとして誕生しました。
その法律上の定義は、以下の特定小型原付の基準をすべて満たすものとされています。
これらの条件を満たす車両は、新しい交通ルールのもとで運用されることになります。

電動キックボードが主な対象で特に注目されているのが、電動キックボードです。これまで、電動キックボードは多くの場合、そのモーター出力や構造から「原動機付自転車」や「自動車」として扱われ、運転免許の保有やヘルメット着用義務、車道走行が必須でした。
しかし、今回の法改正により、上記の特定小型原付の基準を満たす電動キックボードは、より簡便なルールで利用できるようになりました。
もちろん、全ての電動キックボードが特定小型原付に該当するわけではありません。
上記の基準から外れる電動キックボードは、引き続き従来の原付や自動車の区分として扱われるため、注意が必要です。
特定小型原付と、これまで一般的に「原付」と呼ばれてきた「原動機付自転車(原付一種)」とでは、多くの点で違いがあります。
項目 | 特定小型原付 | 原付一種 |
最高速度 | 20km/h以下(歩道走行時は6km/h) | 30km/h以下 |
車体サイズ | 長さ190cm以下、幅60cm以下 | 定義なし(排気量50cc以下) |
動力 | 電動のみ | 排気量50cc以下の内燃機関(ガソリンエンジンなど)または電動 |
免許 | 16歳以上なら不要 | 原付免許などが必要 |
ヘルメット | 着用は努力義務 | 着用義務あり |
走行場所 | 車道、自転車道、条件付きで歩道も可 | 車道のみ(自転車道は不可、歩道は不可) |
二人乗り | 不可 | 不可 |
車体登録 | ナンバープレートの装着が義務付け | ナンバープレートの装着が義務付け |
自賠責保険 | 加入義務あり | 加入義務あり |
税金(軽自動車税) | 2,000円/年(地域により異なる場合あり) | 2,000円/年(地域により異なる場合あり) |
このように、特定小型原付は、原付一種に比べてより自転車に近い感覚で利用できるようなルール設計がされています。
特に、免許不要という点が大きな違いであり、これが特定小型原付が注目される理由の一つでもあります。

特定小型原付として認められるためには、前述の法律上の定義を満たす必要があります。
ここでは、具体的な条件を詳しく見ていきましょう。
特定小型原付の最も重要な条件の一つが、最高速度が20km/hを超えないことです。これは、アクセルを最大限開けても20km/h以上の速度が出ないよう、車両の構造上で制限されている必要があります。
さらに、特定小型原付には**「特例特定小型原付」**という区分があり、これは歩道走行を可能にするための機能を持っています。特例特定小型原付として歩道を走行する際には、以下の条件を満たす必要があります。
これらの条件は、車両に搭載されたモード切り替え機能によって切り替えられるようになっています。歩道モードでは緑色の最高速度表示灯が点滅し、車道モードでは点灯することで、周囲の人がその車両がどのモードで走行しているかを判断できるようになっています。
特定小型原付は、その車体サイズにも制限があります。具体的には、長さが190センチメートル以下、幅が60センチメートル以下でなければなりません。このサイズは、一般的な自転車よりも少し小さめか同程度のサイズ感であり、歩道や駐輪場での取り回しやすさを考慮したものです。
このサイズ制限は、車両が歩道や狭い場所を走行する際の安全性を確保するため、また、既存のインフラ(駐輪スペースなど)との整合性を図るために設けられています。
モーター出力、構造など特定小型原付の動力源は、電動であることが必須です。また、その定格出力は0.60キロワット以下と定められています。これは、一般的な電動アシスト自転車のモーター出力(0.25kW以下)よりも高く、原付一種のモーター出力(0.60kW以下)と同じ上限です。
さらに、運転操作に関する構造要件として、AT機構(オートマチックトランスミッション)がとられていること、つまりクラッチ操作を必要としない構造であることも条件です。これにより、運転操作が簡素化され、より多くの人が手軽に利用できるようになっています。
また、安全面では、制動装置(ブレーキ)や前照灯(ヘッドライト)、尾灯(テールランプ)、警音器(クラクション)、方向指示器(ウインカー)などの保安部品が、道路運送車両の保安基準に適合している必要があります。これらの部品が正しく機能することで、夜間や悪天候時でも安全に走行でき、周囲の交通に自車の動きを伝えることができます。
先ほど少し触れましたが、特定小型原付には「特例特定小型原付」というサブカテゴリが存在します。これは、特定小型原付の条件に加え、歩道走行モードへの切り替え機能を持つ車両を指します。
項目 | 特定小型原付 | 特例特定小型原付(歩道走行時) |
最高速度 | 20km/h以下 | 6km/h以下 |
走行場所 | 車道、自転車道 | 車道、自転車道に加え、歩道も可 |
最高速度表示灯 | 常時点灯 | 点滅 |
その他 | 歩道モードへの切り替え機能は不要 | 歩道モードへの切り替え機能と、それに伴う表示灯の切り替え機能が必須 |
特例特定小型原付は、条件を満たせば歩道を走行できるという点で、通常の特定小型原付と大きく異なります。
ただし、歩道走行時には歩行者優先が徹底され、最高速度も歩行者の速度に合わせて6km/hに制限されるため、その特性を理解しておくことが重要です。

特定小型原付について詳しく見てきましたが、街中には似たような見た目のモビリティが他にもあります。
電動自転車や原付、自転車との違いを明確にし、それぞれの分類を整理していきましょう。
まず、よく混同されがちなのが「電動アシスト自転車」です。電動アシスト自転車は、あくまで自転車であり、モーターはあくまでペダルを漕ぐ力を補助するためのものです。
項目 | 特定小型原付 | 電動アシスト自転車 |
動力源 | 電動モーターのみで自走可 | 電動モーターはペダルを漕ぐ補助のみ(自走不可) |
最高速度 | 20km/h以下(自走) | 24km/hまで補助(漕ぐ速度による) |
車体サイズ | 長さ190cm以下、幅60cm以下 | 自転車の範囲内 |
免許 | 16歳以上なら不要 | 不要 |
ヘルメット | 着用は努力義務 | 着用は努力義務(改正道路交通法による) |
走行場所 | 車道、自転車道、条件付きで歩道も可 | 車道、自転車道、歩道(自転車通行可の表示がある場合) |
ナンバー | 必要 | 不要 |
自賠責保険 | 加入義務あり | 不要 |
最大の違いは、特定小型原付がモーターのみで自走できるのに対し、電動アシスト自転車はあくまで「人力+補助」であるという点です。
そのため、特定小型原付にはナンバープレートの装着義務や自賠責保険への加入義務がありますが、電動アシスト自転車にはありません。
特定小型原付以外にも、様々な電動モビリティやバイクが存在します。それぞれの主な特徴を比較して、その違いを明確に理解しましょう。
項目 | 自転車 | 電動アシスト自転車 | 特定小型原付 | 原付一種(50cc以下) | ミニバイク(125cc以下) |
動力源 | 人力 | 人力+電動補助 | 電動のみ | 内燃機関/電動 | 内燃機関/電動 |
最高速度 | 人力による | 24km/hまで補助 | 20km/h以下 | 30km/h以下 | 60km/h以上 |
免許 | 不要 | 不要 | 16歳以上なら不要 | 原付免許など | 小型二輪AT/MTなど |
ヘルメット | 努力義務 | 努力義務 | 努力義務 | 義務 | 義務 |
走行場所 | 車道、自転車道、歩道(条件付き) | 車道、自転車道、歩道(条件付き) | 車道、自転車道、歩道(条件付き) | 車道のみ | 車道のみ |
ナンバー | 不要 | 不要 | 必要 | 必要 | 必要 |
自賠責保険 | 不要 | 不要 | 義務 | 義務 | 義務 |
車検 | 不要 | 不要 | 不要 | 不要 | 不要(一部例外あり) |
税金(軽自動車税) | なし | なし | 2,000円/年 | 2,000円/年 | 2,400円/年 |
この表を見れば、特定小型原付が、自転車と原付の間に位置する、新たな車両区分であることがよく分かります。
特に「免許不要」という点が、他の電動モビリティと大きく異なる特徴です。
特定小型原付を運転する上で、特に気になるのがナンバープレートの有無、ヘルメット着用義務、そして運転免許の要否でしょう。
これらの要件をしっかりと理解し、適切に対応することが、特定小型原付を安全かつ合法的に利用するための第一歩です。

特定小型原付は新しい車両区分であるため、その運転ルールもこれまでの乗り物とは異なる点が多くあります。
ここでは、特定小型原付を運転する上で知っておくべき基本的なルールについて詳しく解説します。
前述の通り、特定小型原付は16歳以上であれば、運転免許は不要です。これは、自動車や原付バイクのように、運転免許試験を受ける必要がないことを意味します。この「免許不要」という点が、特定小型原付が広く普及するきっかけの一つとなるでしょう。
しかし、免許が不要だからといって、交通ルールを知らなくても良いというわけではありません。自転車と同じように、道路交通法を遵守する義務があります。むしろ、モーターで自走できる分、自転車以上に安全運転への意識が求められます。
特定小型原付の運転者には、ヘルメットの着用が努力義務とされています。罰則はありませんが、万が一の事故の際に頭部を守るために、ヘルメットを着用することを強く推奨します。最近では、デザイン性の高いヘルメットも増えているので、自分のスタイルに合ったものを選んで積極的に着用しましょう。
特定小型原付は、基本的には車道を走行します。その際、自転車と同じく、原則として車道の左端を走行しなければなりません。
また、自転車道(自転車専用の道路標識がある場所)がある場合は、そこを走行することができます。
そして、特定小型原付の大きな特徴として、特例特定小型原付の基準を満たし、かつ特定の条件を満たした場合に限り、歩道を走行できる点が挙げられます。歩道走行の条件は以下の通りです。
歩道走行中に歩行者がいる場合は、原則として一時停止するか、歩行者の通行を妨げないように徐行しなければなりません。特定小型原付は、車体がコンパクトであるとはいえ、歩行者にとっては思わぬ危険となる可能性があります。常に歩行者への配慮を忘れないようにしましょう。
なお、自転車通行帯(車道の左端に青いラインで示された帯)は、自転車専用の場所なので、特定小型原付も走行可能です。
特定小型原付は、公道を走行する車両として、以下の義務も負っています。
これらの義務を怠ると、罰則の対象となるだけでなく、大きな事故に繋がる可能性もあります。特定小型原付に乗る前には、必ずこれらのルールを確認し、遵守する準備をしましょう。

特定小型原付は免許が不要とはいえ、道路交通法が適用される車両です。ルールを破れば、当然ながら罰則の対象となります。ここでは、特に注意したい違反行為とその罰則について解説します。
特定小型原付は16歳以上であれば免許が不要ですが、以下のような場合は「無免許運転」とみなされる可能性があります。
特定小型原付であっても、一般的な交通ルールは厳しく適用されます。特に以下の違反行為は、大きな事故に繋がりやすく、重い罰則が科されます。
特定小型原付の違反も、自転車の違反と同様に、交通反則通告制度の対象外となる場合があります。つまり、青切符ではなく、赤切符が交付され、刑事罰(罰金など)の対象となる可能性が高いということです。
また、特定小型原付の運転者は、原則として免許が不要なため、違反点数制度の適用はありません。しかし、これは「何をしてもいい」ということではありません。悪質な違反を繰り返した場合や、重大な事故を起こした場合は、運転者講習の受講命令が出されたり、特定小型原付の運転が禁止されたりする可能性があります。
さらに、もし自動車や原付バイクの免許を保有している人が特定小型原付で違反した場合、その違反内容によっては、保有している免許の点数が加算される可能性もゼロではありません。例えば、飲酒運転やひき逃げなどの重大な違反は、他の免許に影響を及ぼす可能性があります。
特定小型原付は手軽に利用できる反面、その交通ルールと罰則を軽視してはいけません。安全に、そして合法的に利用するためにも、常に交通ルールを意識した運転を心がけましょう。

特定小型原付の購入を検討しているなら、後悔のないように、いくつかの重要なポイントを確認しておく必要があります。
特定小型原付に関する基本的な交通ルールは道路交通法で定められていますが、一部の地方自治体では、地域の実情に応じた独自の条例やルールを設けている場合があります。
例えば、特定のエリアでの速度制限や、通行禁止区間、駐輪場所に関する細かな規定などがあるかもしれません。購入を検討している、または利用を予定している地域の自治体のウェブサイトや交通安全に関する情報を事前に確認することをおすすめします。これにより、予期せぬルール違反を避け、スムーズに特定小型原付を利用できます。
前述の通り、特定小型原付には自賠責保険への加入が義務付けられています。これは、交通事故の被害者救済を目的としたもので、加入していなければ公道を走行できません。
自賠責保険は、主に人身事故による被害者のケガや死亡に対する補償ですが、対物賠償や運転者自身のケガはカバーされません。そのため、万が一の事故に備えて、以下の任意保険への加入も強くおすすめします。
これらの任意保険に加入することで、万が一の事故の際にも安心して対応できます。購入と同時に保険についても検討し、適切な補償を備えるようにしましょう。
特定小型原付を安全に利用するためには、車両に装備されている保安部品以外にも、積極的に安全性を高めるアイテムを活用することをおすすめします。
これらのアイテムを積極的に利用することで、特定小型原付での移動がより安全で快適なものになります。

新しいモビリティとして注目されている特定小型原付は、私たちの生活や移動にどのような変化をもたらすのでしょうか。
現在、都心部を中心に電動キックボードのシェアサービスが普及し始めています。特定小型原付のルールが明確化されたことで、これらのシェアサービスは今後さらに拡大していくことが予想されます。
免許不要で手軽に利用できるため、観光客やビジネスパーソンが短距離移動の手段として利用したり、公共交通機関の「ラストワンマイル」(駅から目的地までの最後の移動)を補完するモビリティとして活用されたりするでしょう。自宅で車両を所有しなくても、必要な時に必要なだけ利用できるシェアサービスは、特定小型原付の普及を加速させる大きな要因となります。
特定小型原付は、様々なシーンでの活用が期待されています。
特定小型原付は、まだ新しい車両区分であり、そのルールや運用方法は今後も変化していく可能性があります。利用状況や事故発生状況に応じて、さらなる法改正が行われることも考えられます。
また、車両自体の技術も日々進化しています。バッテリーの軽量化や長距離化、AIによる安全運転支援システムの搭載、デザインの多様化など、今後も様々な改良が加えられていくでしょう。自動運転技術の進展によっては、将来的には特定小型原付を活用した無人モビリティサービスが登場する可能性もゼロではありません。
特定小型原付は、都市部の交通渋滞緩和や環境負荷低減にも貢献しうる、未来のモビリティとして大きな可能性を秘めています。
2023年の道路交通法改正によって誕生した特定小型原動機付自転車(特定小型原付)は、私たちの身近な移動手段に新たな選択肢をもたらしました。電動キックボードを中心に普及が進む特定小型原付は、16歳以上であれば免許不要で利用できる手軽さが魅力です。
しかし、手軽さの反面、その交通ルールは従来の自転車や原付バイクとは異なる点が多く、正しく理解して利用することが非常に重要です。
特定小型原付は新しい交通手段として注目されていますが、正しく理解して乗ることが何よりも重要です。交通ルールや車両区分をしっかりと把握し、安全運転を心がけることで、あなたにとって便利で楽しい移動手段となるはずです。
もし、特定小型原付の購入や利用に関して、まだ疑問や不安な点があれば、お近くの警察署や自治体の交通安全担当部署、または販売店に相談してみるのも良いでしょう。




