2025年12月27日
【2025年9月事業化決定】「UNI-ONE(ユニワン)」がかなえる新しい移動の可能性
皆さんは最近話題の「UNI-ONE(ユニワン)」というハンズフリーパーソナルモビリティをご存じですか?ホンダ(本田技研工業株式会社)が開発した手を使わずに移動の自由をかなえる乗用具で、2025年9月24日から国内法人向けの販売を開始すると発表されました。 近未来感あるスタイリッシュな見た目の「UNI-ONE」とはどんなモビリティなのか、機能性や想定している使用シーン、具体的な導入事例と合わせて紐解いていきたいと思います。
読者の関心度
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片倉 好敬
Katakura Yoshitaka
アベントゥーライフ株式会社
代表取締役 兼 CEO
「UNI-ONE」はどんなモビリティ?他の乗用具との違いや最先端の機能性を解説
「UNI-ONE」はHondaのロボティクス事業から生まれた着座型一人乗りのパーソナルモビリティです。難しい操作は一切不要、座って進みたい方向に体を傾けるだけで運転可能なので子どもや高齢者、身体障がい者など、どんな人でも簡単に操縦できるメリットがあります。
体重移動で操作できるモビリティというと「セグウェイ」を思い浮かべる方も多いと思いますが、「UNI-ONE」は座って移動できるのでセグウェイより安定感があり、操作の難易度も低いです。
さらに、運転者が安心して利用できるようにさまざまな工夫が施されています。
①高度な制御システム搭載
センサーと高質な制御システムにより、動作意図を瞬時に判断して方向や速度を調整するほか、転倒のリスクを先読みして停止する機能も備わっています。「便利そうだけど、転倒や衝突が怖い」という不安を取り除き、すべての人が安心して運転できるシステムを構築しています。
②目線が立位に近い
車いすや一般的な電動モビリティの場合、歩行者より走行時の目線が低いことがほとんどですが「UNI-ONE」の場合は移動時にシートが上がり、ハイポジションになります。
周囲の人とコミュニケーションがとりやすく、無意識に生じる心理的な壁を取り除く効果も期待されています。
移動用小型車の認定も取得済みなので屋内外で同行者と一緒に移動することもできます。「UNI-ONE」が導入されている商業施設では、モビリティに座る高齢の両親や祖父母と同じ目線でショッピングや散策を楽しむことができるかもしれません。
③困ったときに助かる見守り機能
クラウド接続により、すべての「UNI-ONE」をリアルタイムで見守ることが可能です。故障やバッテリー切れ・位置情報の把握はもちろん、エマージェンシーコールにも即時対応。万が一のトラブルがあったときのサポート体制も充実しています。
④街に溶け込むスタイリッシュなデザイン性
角のない丸みのあるフォルムや隠れた車輪は、「すれ違う歩行者に緊張を与えない」という効果を目的にデザインされたそう。歩行者と同じ緩やかなスピードで走行できるので街や周囲の歩行者と共存をかなえます。いま実現を目指している「歩車混合システム」への導入も期待できます。
次世代モビリティ「UNI-ONE」開発の道のりとは?
ホンダは新しいモビリティの創造性を目指し、以前からロボティクス事業に力を入れていました。「UNI-ONE」は同社が開発・販売していた世界初の本格的な二足歩行ロボット「ASIMO(アシモ)」の技術を取り入れています。
「ASIMO」は2000年から開発が始まり「2足歩行をするヒューマノイドロボット」としてテレビなどでも話題になっていたので、何となく知っている方も多いのではないでしょうか?(かつて日清カップヌードルとコラボしていたことも……。)
その後、U3-Xという一輪車を開発し、UNI-CUB(ユニカブ)に発展、さらに開発が進んでUNI-ONE(ユニワン)が誕生しました。長い年月をかけて新しく画期的な次世代モビリティに進化したのです。
次世代モビリティ「UNI-ONE」はどんなシーンでの利用を想定している?
軽やかな操作性と便利な機能を搭載した「UNI-ONE」は様々なシーンでの活躍が期待されています。
①高齢者や身体が不自由な方の移動手段として
一番想像しやすい利用シーンだと思います。従来、足腰が不自由な高齢者や身体障がい者の移動手段として一般的なモビリティは「車いす」でした。近年は電動車いすなどの開発も進んでいますが、「歩行者と目線が合わない」「段差や坂道などの移動が大変」などのデメリットも。
「UNI-ONE」を利用すれば、歩くときと同じような直感的な感覚で動ける楽しさや、歩行者と同じ目線で並走できる喜びを感じることができ、生活や移動のQOLが向上します。
たとえば親子3世代でテーマパークや商業施設に行ったとき、「UNI-ONE」があれば長時間の歩行に自信がない年配の方も安心して家族と一緒にレジャーを楽しむことができるかもしれません。
また、下肢に障がいのある方でも移動しながら両手が自由に使えるようになるので、職場で利用すれば仕事や作業の効率アップに繋がります。介助の方に車いすを押してもらうのではなく、隣に並んで移動できるようになるのも嬉しいポイントですよね。
ちなみに、3歳以上を目安に、大人が目を配っていれば小さな子どもの乗用も可能なので、お出かけ先で疲れてしまった場合のベビーカー代わりとして活用することもできますよ。
②警備や接客など、立ち仕事の方の負担軽減に
「UNI-ONE」の利用者は下肢が不自由な方だけではありません。テーマパークや商業施設で働く警備員やスタッフの負担軽減のために導入するというアイディアもあります。
通常、立ち仕事というイメージがある警備業や接客業ですが、長時間の立ち仕事は腰痛やヘルニア、心疾患や慢性疲労など、健康被害のリスクが高いと言われています。歩行と同じような感覚で利用できる「UNI-ONE」を導入することで仕事の負担が軽くなり、労働生産性の向上に貢献できると期待されています。
③新たなエンターテイメントとしての活用も
両手が自由に使えて身体の動きに合わせて走行可能という「UNI-ONE」の特徴を活かし、XRゲーム(※)への活用も検討されています。
具体的には、ルートを辿るゲームの乗用具として使用し、障害物に接触するとモビリティが振動するなどの演出や、自在に移動しながら両手を活かすレースゲームが候補に挙がっているそう。新しいエンターテイメントを体験できる日も近いかもしれません。
※Extended Realityの略称。VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)といった、現実世界と仮想世界を融合することで現実にはないものを知覚できるようにする技術のこと。
「UNI-ONE」を実際に導入した企業や施設の具体事例をご紹介!
①飯能靖和病院
一般病棟34床を含む314床の病棟と、166床の介護医療院を併設する飯能靖和病院では、回復期リハビリテーション病棟に入院中、もしくは外来で通院している患者を対象に「UNI-ONE」を活用した新しいトレーニングを取り入れています。
重心移動ベースの構造が体幹に良いと判断して導入を決定し、患者の状態やニーズに合わせて乗車訓練を施した結果、回復が難しいと言われていた方が笑顔を取り戻し、身体状態も改善するなど、効果的な成果をあげました。
リハビリ中、家族と手をつないで会話をしながら移動を楽しむことができるのも「UNI-ONE」ならではの魅力。「うまく乗れるようになったらショッピングに行きたい」と利用者から前向きな声が聞けるなど、心と身体に良い影響を与えていることが分かる事例です。
参考:楽しく乗れるからこそ、トレーニングの継続意欲向上に貢献|事例と導入の流れ|UNI-ONE|Honda公式サイト
②日鉄興和不動産株式会社(品川インターシティ)
東京都心部の大規模都市開発や高級賃貸マンションを手掛ける総合デベロッパー、日鉄興和不動産株式会社。同社が開発した品川インターシティで業界初の「ビル管理業務へのUNI-ONE活用実証」を行いました。
人手不足や従業員の高齢化が課題と言われるオフィスビル管理業務。働く人からも選ばれるオフィスビルを目指し、2024年11月から2025年3月までの期間限定で試験的に導入したのです。
その結果、対象業務の作業時間を約25%削減することに成功。従来の徒歩による清掃より作業の質も良く、清掃員の負荷軽減にも貢献しました。
清掃現場における業務効率化と働きやすさの両立に大きく貢献する可能性が実証された事例です。
参考:『UNI-ONE』の活用によりオフィスビル管理業務の負担軽減に貢献 ―清掃時間を約25%削減し、業務全体の約40%の負担を軽減― | 日鉄興和不動産 コーポレートサイト
③三菱地所株式会社/株式会社ビービット
最後に「UNI-ONE」をイベント集客のために導入した事例をご紹介します。
2025年2月22日~24日と、3月22日~23日に東京・丸の内の三菱ビル1FコンファレンススクエアM+で「UNI-ONE」を用いた新しい体験イベントが開催されました。
海の流れに合わせて動いたり、渦潮に入ると回転したり……と、モビリティに乗りながらARグラスを通して水中探検を体験できるという新鮮さが好評を博し、テーマパーク並みに高いNPS(顧客ロイヤルティを測る指標)を獲得しました。
小さい子どもから高齢者まで楽しめる体験型ARの可能性と「UNI-ONE」がもたらす唯一無二の体験価値が実証できたイベントだったと言えるでしょう。
2025年9月事業化が決定した「UNI-ONE」。今後街で見かける機会が増えるかも!
2025年9月24日に日本国内の法人向けに販売が決定した「UNI-ONE」。10月19日から、株式会社サンリオエンターテイメントが運営する「サンリオキャラクターパーク ハーモニーランド」への導入も決まっています。
ハンズフリーパーソナルモビリティが日常に溶け込む未来は近いかも?今後の動向にぜひ注目してみてはいかがでしょうか。