記事の目次
- 1. 近江八景とは?|日本文化を彩る絶景の舞台
- 2. 近江八景聖地巡礼ツアー概要|電動モビリティで行く旅
- 3. 【Day 1】南湖から湖西へ|石山寺・三井寺・唐崎・堅田
- 4. 【Day 2】湖西から湖東へ|比良・矢橋・粟津・瀬田
- 5. 1日の終わりは温泉へ|雄琴温泉・坂本温泉で極上リラックス
- 6. 巡礼の旅を彩る滋賀グルメ&アニメスポット
- 7. まとめ|過去と現在が交差する近江八景の旅へ
近江八景の美しさを、歌川広重の浮世絵と現地の絶景を比較しながら巡る聖地巡礼ツーリング。さらに『ちはやふる』『バジリスク 〜甲賀忍法帖〜』『けいおん!』など、滋賀ゆかりのアニメ聖地にも立ち寄り、電動モビリティで巡る自転車旅を満喫。温泉・グルメ情報も網羅した、文学・歴史・ポップカルチャーが交錯する滋賀・日本文化巡礼プラン。

琵琶湖に寄り添うように点在する、八つの風景。
それが、**近江八景(おうみはっけい)**です。

「近江八景の位置を示した地図。琵琶湖を囲む八つの絶景ポイントを一望できる。」
出典:いま滋賀.jp『近江八景の旅 近江八景の由来』
「近江」とは、今の滋賀県のこと。
室町時代に、中国の洞庭湖に倣って選ばれたこの八景は、
季節ごとの光と風を感じられる、日本を代表する絶景スポットたち。
近江八景の名が定着したのは、室町時代後期。
やがて江戸時代になると、あの安藤広重が浮世絵に描き、
日本全国にその名を知らしめました。
でも、近江八景が特別なのは、単なる「景色の美しさ」だけではありません。
そこには、文学、歴史、宗教、人々の祈り、
さまざまな物語が何層にも重なっているのです。
例えば──
そして、現代。
この静かな湖畔は、アニメ『ちはやふる』の舞台としても蘇り、
新しい「物語」を生み続けています。
近江八景とは、
過去と現在が静かに交差する、日本文化の交差点なのです。
今回の旅では、各地で広重の浮世絵を手がかりに、
昔と今の風景を見比べていきます。
例えば、広重が描いた「瀬田の夕照」──
そこに描かれた光と水の景色は、現代の私たちの目にも、
なお鮮やかに、力強く映ります。

「安藤広重『近江八景 瀬田夕照』。夕陽に照らされる瀬田の唐橋と琵琶湖の水面、遠景には比叡山を望む、光と影が織りなす絶景。」
出典:いま滋賀.jp『近江八景の旅 瀬田夕照』
スマホをかざして、広重の絵とリアルな風景を重ね合わせる。
それだけで、まるで時空を越えた小さな旅をしている気分になるでしょう。
さあ、いよいよ出発です。
でも今回は、ただの自転車旅ではありません。
私たちの旅の相棒は──
電動アシスト付きのモビリティ。
いま、世界中でeモビリティツーリズムが流行っています。
その理由は、たった三つ。
漕がなくても、景色に集中できる
ペダルを軽く回すだけで、スイスイ進む。
長い坂道も、湖岸沿いの風も気になりません。
その分、視線も心も、目の前の景色にぐっと集中できるのです。
琵琶湖の水面をかすめる風、
湖畔の木々を透かす陽光、
道ばたの小さな花。
──そのすべてを、五感で味わえる。
疲れにくいから、最後まで旅を楽しめる
脚力や体力に自信がなくても大丈夫。
電動アシストが、長距離の移動を楽にしてくれます。
移動の途中で「疲れた」とあきらめることがない。
最後の1スポット、最後の1枚の浮世絵まで、
ワクワクした気持ちのまま辿り着けます。
地球にやさしい移動手段
エコな電力で走り、CO2排出はゼロ。
豊かな自然に恵まれた琵琶湖を、
未来に受け継ぐために──
移動手段にもちょっとした心配りを。
このeモビリティで、
古(いにしえ)と今をつなぐ八つの景色を巡る。
それが、今回の旅なのです。
いよいよ、旅の準備です。 今回の旅は、近江八景── つまり、琵琶湖をぐるりと囲む八つの景勝地を、 電動モビリティで一つひとつ丁寧に巡っていきます。
しかも、ただ巡るだけじゃない。
過去と今が交差する湖畔を、 五感すべてで味わい尽くす旅。
どれか一つでも当てはまるなら、 きっとこの旅はあなたにぴったりです。
Day 1|南湖から湖西へ──歴史と文学の道
時間
いよいよ、旅の1日目が始まります。 スタートは、琵琶湖の南側──南湖と呼ばれるエリアから。
ここは、文学と歴史、そして絶景が凝縮されたエリア。 eモビリティにまたがり、朝の澄んだ空気を吸い込んだら、 さあ、最初の八景へ向かいましょう。
静かな瀬田川の流れを見下ろす高台に佇む、石山寺。 ここは、紫式部が『源氏物語』の構想を練った場所として知られています。

「満月に照らされる石山寺の秋夜。『近江八景』石山の秋月として知られる、月夜に映える静謐な光景。」
出典びわ湖大津観光協会公式サイト『石山寺 秋月観月会』
『源氏物語』は、世界最古の長編小説とも言われ、 11世紀に書かれたこの物語は、今なお世界中で読み継がれる日本文化の象徴。 **「人類史上初の心理描写文学」**とも評され、 近年では、世界遺産暫定リスト登録も目指されています。
浮世絵師・安藤広重も、 秋の夜空に輝く月と、荘厳な伽藍を描きました。

「安藤広重『近江八景 石山の秋月』。満月の下、琵琶湖と瀬田川、そして石山寺の岩肌を繊細に描き出した秋の情景。」
出典:文化遺産オンライン『近江八景 石山の秋月』
夜には満月が美しい石山寺。けれど、旅の始まりは朝──清澄な空気に包まれた静寂の境内から、静かに歩き出します。
見どころ
秋には紅葉が、春には桜が、そして一年を通して月が美しい。 ふと、平安の昔に想いを馳せたくなる瞬間です。
ここでリンクするアニメ・文化
源氏物語を題材にした漫画作品として、 大和和紀先生の**『あさきゆめみし』は外せません。 1979年から連載が開始され、 累計発行部数は1700万部超**。 平安の雅な世界を、繊細な筆致で現代に蘇らせ、 日本中に源氏物語ブームを巻き起こしました。

「大和和紀『あさきゆめみし』(講談社 KC Kiss)第1巻表紙。源氏物語を華麗に描いた歴史漫画の金字塔。」
出典:講談社公式サイト『あさきゆめみし THE TALE OF GENJI』
古典が苦手な学生たちにも受け入れられ、 古典文学入門書としても高く評価され続けています。
続いて向かうのは、三井寺(園城寺)。

「春になると境内を彩る三井寺の桜。水面に映る満開の桜は、訪れる人を幻想的な世界へと誘います。」
出典:tenki.jp「三井寺の桜開花情報2024」
境内に響く鐘の音は、かつて松尾芭蕉も耳を傾けたといわれています。
芭蕉が近江の地に寄せる思いは深く、
旧暦八月十五夜、中秋の名月の日には、義仲寺で盛大な月見の句会が開かれました。
その夜、琵琶湖に舟を浮かべた芭蕉は、
湖上から三井寺を望み、こんな句を詠みます。
三井寺の門たたかばやけふの月
──三井寺の門を叩いて、修行僧たちにもこの名月を知らせたくなるほどの、
見事な月だったのでしょう。
夕暮れ時、鐘の音とともに見上げる月。
その静けさと感動は、現代を生きる私たちにも変わらず訪れます。
広重の浮世絵にも、
夕暮れの鐘の音に耳を傾けながら歩む旅人たちが描かれています。

「安藤広重『近江八景 三井の晩鐘』。三井寺(園城寺)の鐘楼と比叡山を背景に、夕暮れの静けさを描き出した浮世絵の名作。」
出典:文化遺産オンライン『近江八景 三井の晩鐘』
昔も今も、変わらぬ三井寺の景色。
旅の途中、ふと足を止めて、
芭蕉が見上げたであろう空を仰いでみたくなる場所です。
見どころ
本来は、鐘の音が境内に満ちる夕暮れ時が「三井の晩鐘」として知られますが、訪れるのは朝。澄んだ空気と静寂に包まれた境内を、ゆっくりと歩いてみましょう。カメラを置いて、耳をすませたくなる、そんな時間が待っています。
湖岸沿いに北へ進み、辿り着くのは唐崎神社。 ここには、かつて広重が描いた名松、唐崎の松が静かに立っています。

「安藤広重『近江八景 唐崎の夜雨』。夜雨に煙る唐崎神社と松林を幻想的に描いた、静謐な美しさが際立つ浮世絵。」
出典:日吉大社公式サイト『唐崎神社』
夕暮れに差し掛かると、 雨粒が湖面を叩き、空と湖と松が一体化してゆく。 そんな幻想的な情景が、今もここにはあります。
見どころ
唐崎神社の風景は、近江八景『唐崎の夜雨』で描かれた雨にけぶる情景が有名ですが、訪れるのは昼間。晴れた湖岸の美しさも、また格別です。
さらに北へ進むと、堅田の町に出ます。 ここにあるのが、湖面に浮かぶ小さなお堂──浮御堂。
広重は、ここを飛び立つ雁たちの姿と共に描きました。 秋の夕暮れ、群れをなして飛ぶ雁の影が、 湖面に美しい波紋を残していきます。

安藤広重『近江八景 堅田の落雁』。秋の夕暮れ、堅田の湖上を渡る雁の群れと、琵琶湖に浮かぶ漁船を静かに描いた作品。
出典:文化遺産オンライン『近江八景 堅田の落雁』
見どころ
今はランチタイム。でも、もし時間が許すなら──。
夕暮れ時、湖面と空が黄金色に染まる瞬間は、ここでしか出会えない絶景です。

満月寺浮御堂。湖に浮かぶ静謐な御堂は、近江八景「堅田の落雁」にも詠われた絶景スポットです。
画像出典:クラブツーリズム 旅のしるべ
ここでリンクするアニメ・文化
ここ堅田エリアは、 実写映画版**『ちはやふる』**(主演:広瀬すず)のロケ地としても有名です。
広瀬すずさんはこの作品で、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで国民的女優へと駆け上がりました。 映画公開後、全国的に競技かるたの認知度が急上昇し、 競技人口は2010年頃から比べて約1.5倍にも増加。 近江神宮を聖地とするかるた文化の再評価にも、大きな役割を果たしました。
ランチタイム|湖岸カフェで味わう近江牛バーガー
旅の途中、お腹もすいてきましたね。 琵琶湖湖岸沿い、特に堅田エリアには、 地元食材を使ったカフェやレストランが点在しています。 これは観光協会のカフェガイドにも掲載されており、地元民にも人気です。

「近江牛を贅沢に使った本格バーガー。堅田エリアのカフェで味わえる、肉の旨みが凝縮された一品。」
出典:しがトコ『滋賀の近江牛バーガー』
https://www.shiga-create.jp/moa/archives/detail/id/7159/cate/gourmet/
おすすめは、近江牛バーガー。 近江牛は、神戸牛・松阪牛と並び、 日本三大和牛のひとつに数えられています。
その品質は、全国和牛能力共進会(和牛オリンピック)でも常に上位評価。 とろける脂と旨味は、 「一度食べたら忘れられない」と言われるほどの絶品。
目の前に広がる琵琶湖の景色とともに、 最高のランチタイムを味わいましょう。
朝の琵琶湖は、まるで呼吸をしているかのように静かです。
澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込んだら、2日目の出発。
まずは、湖西にそびえる比良山系へ目を向けましょう。
冬には白く輝く雪景色、春には新緑──
季節ごとに違った表情を見せる山並みが、朝の光に包まれています。
湖西の景色を堪能したあとは、
モビリティに乗って、琵琶湖大橋をゆっくり渡りましょう。
湖面を渡る風を感じながら、対岸の湖東へ。
かつて帆掛け舟が行き交った矢橋帰帆島を目指します。
景色も文化も、ここからまた新たな物語が始まります。
琵琶湖の西岸、雄大にそびえる比良山系。 ここは、広重も描いた比良の暮雪で知られる絶景スポット。

「安藤広重『近江八景 比良の暮雪』。雪に包まれた比良山系の雄大な姿を描き、冬の静寂と荘厳さを伝える傑作。」
出典:文化遺産オンライン『近江八景 比良の暮雪』
比良山の雪景色は、冬はもちろん、春先にも名残を留めることがあり、 湖岸から眺めると、 白くかすむ山並みと、静かな湖面が溶け合う光景に心を奪われます。

冬の比良山系。琵琶湖を望む雪化粧の山並みは、近江八景「比良の暮雪」に描かれた情景そのもの。静かな湖面に映る白銀のパノラマが、季節の移ろいを感じさせます。
出典
びわ湖大津経済新聞「比良山系・冬景色」
見どころ
カメラ好きなら、ぜひ望遠レンズを。 湖面越しに見る雪山のパノラマは、 まるで絵画のような美しさです。
湖西の比良山系の景色を胸に刻んだあとは、モビリティを走らせ、琵琶湖大橋へ。
湖面をわたる風に吹かれながら大橋を渡りきると、目指すは矢橋帰帆島。
かつては、琵琶湖を行き交う帆掛け舟が、この地を賑わせていました。
その穏やかな情景は、広重の『矢橋の帰帆』にも描かれています。

「安藤広重『近江八景 矢橋の帰帆』。帆掛け船が湖上を静かに進む様子が描かれ、夕暮れの琵琶湖に穏やかな情景をもたらしています。」
出典:松雲庵「近江八景 矢橋の帰帆」紹介ページ
江戸時代、東海道を短縮できる矢橋の渡しは、旅人たちに重宝され、
船着き場として大いに賑わったと伝えられます。
現在は湖岸公園として整備され、芝生広場に立てば、
往時の旅人たちが目にした景色に想いを馳せることができるでしょう。
見どころ
昔日の旅人が感じた風と波を、 私たちもeモビリティに乗って感じながら進みます。
次に訪れるのは、かつて粟津の戦いの舞台となった粟津原跡。 源頼朝の甥・源義経と、平家の武将・平重衡が交錯した地。 広重は、ここを粟津の晴嵐として、春の風に吹かれる景色に描きました。
今では市街地の一角となり、 かつての戦場の面影はほとんど残っていませんが、 春の柔らかな風に揺れる野原には、 遠い過去への静かな郷愁が漂っています。

「安藤広重『近江八景 粟津の晴嵐』。さわやかな春の風が吹き抜ける粟津の景色を描いた一枚。」
出典
慶應義塾図書館デジタルコレクション(粟津の晴嵐)
見どころ

「名勝「粟津の晴嵐」。琵琶湖岸に続く松並木と静かな湖面が、近江八景の一つに数えられた風景を今に伝えます。晴れ渡る空のもと、湖岸を歩けば、古の情景が蘇るようです。」
出典
びわ湖大津経済新聞「粟津の晴嵐」
訪れるなら春。 桜の季節、柔らかな風が吹き抜ける野原は、 過去と現在が交錯する、静かなタイムカプセルのよう。
旅のラストを飾るのは、
悠々と瀬田川に架かる名橋──瀬田唐橋。
古来「瀬田の夕照」として広重の浮世絵にも描かれたこの橋は、
今もなお、穏やかな川面にその姿を映し出し、訪れる人々を静かに迎えています。
また、瀬田唐橋は「急がば回れ」ということわざの由来ともいわれ、
舟で琵琶湖を渡る際、あえて波風を避け、唐橋を回った方が早かったという故事に基づいています。
さらに、近くにはかるたの聖地・近江神宮があり、
**『ちはやふる』**ファンにとっても、巡礼のハイライトとなる特別な場所です。

「近江神宮。かるたの聖地として知られ、『ちはやふる』の舞台にもなった、美しい朱塗りの社殿が印象的です。」
画像出典:びわ湖ビジターズビューロー(https://www.biwako-visitors.jp/spot/detail/1200/)
見どころ
ここでリンクするアニメ・文化
『ちはやふる』(末次由紀原作)は、競技かるたを題材にした青春ストーリーの金字塔。

「末次由紀『ちはやふる』。競技かるたに青春をかける高校生たちの姿を描き、多くの読者の共感を呼んだ大ヒット漫画。」
出典:『ちはやふる』公式サイト
実写映画版(主演:広瀬すず)では、主人公・千早たちがかるた全国大会出場を目指し、近江神宮で熱戦を繰り広げます。
また、瀬田川沿いでは夕暮れ時のシーンも撮影され、ファンの間では近江神宮や瀬田川周辺が巡礼スポットとして人気を集めています。
物語のクライマックスを追体験できる、特別な場所です。
🍴 ランチタイム|近江ちゃんぽん or 湖魚料理
2日目のランチは、滋賀のソウルフード、近江ちゃんぽんか、 琵琶湖の恵みたっぷりの湖魚料理を。
近江ちゃんぽんは、 あっさり和風だしにたっぷり野菜がのった、 滋賀県発祥のオリジナル麺料理。

「滋賀県のご当地グルメ、近江ちゃんぽん。あっさりとしたスープにたっぷりの野菜が乗った滋賀ならではの味わい。」
出典
近江ちゃんぽん公式サイト
湖魚料理では、ビワマスのお造りや鮒寿司など、 ここでしか味わえない湖国の味覚を楽しめます。
ゴール|石山駅・解散
旅の終わりには、モビリティとともに、静かな充実感を胸に帰路へ。
瀬田唐橋から石山駅までは、自転車でおよそ15〜20分。
瀬田川沿いの道を北へ進めば、川面の輝きを眺めながら、旅の始まりと終わりをつなぐ石山駅に到着します。
2日間でめぐった、八つの絶景と物語
かつて紫式部が見上げた月、 芭蕉が歩いた湖岸、 広重が描いた光と影、 そして現代の物語たち。
湖国・滋賀で紡がれた数々の時間を、 あなた自身の物語として持ち帰ってください。
八景を巡り、滋賀の文化と物語に浸ったあとは、
旅の途中で、心と体を癒やす温泉に立ち寄ってみませんか。
琵琶湖を望む贅沢なロケーションで、
湯に浸かりながら旅の余韻に浸る──。
そんなひとときが、旅をいっそう深く彩ってくれます。
雄琴温泉(おごとおんせん)|琵琶湖を望む湖畔の湯
琵琶湖西岸に位置し、1300年の歴史を誇る古湯・雄琴温泉。 奈良時代、行基によって開湯されたと伝えられ、 かつては比叡山延暦寺の僧たちも湯治に訪れたといわれています。
泉質はアルカリ性単純温泉で、肌にやさしく「美肌の湯」としても評判。 湯船からは、雄大な琵琶湖の景色を一望でき、 時間とともに移ろう湖面の表情を眺めながら、静かに疲れを癒やすことができます。

「雄琴温泉。湯船に浸かりながら琵琶湖に沈む夕陽を眺める贅沢なひととき。」
出典
おごと温泉観光協会公式サイト
坂本温泉|歴史と自然に包まれる隠れ湯
坂本は近江八景の一つ「唐崎の夜雨」にほど近く、比叡山のふもとに広がる歴史ある門前町。八景巡りの途中に立ち寄れば、湖と山、自然と文化が調和するもうひとつの滋賀の魅力に出会えます。
比叡山の麓に佇む静かな温泉地・坂本温泉。 古くから延暦寺の門前町として栄えた坂本の町並みは、 歴史と自然が調和した穏やかな雰囲気に包まれています。

「坂本の町並み。比叡山延暦寺の門前町として栄えた歴史を感じさせる、石垣と水路が美しい散策路。」
画像出典:びわ湖ビジターズビューロー
歴史ある街道をそぞろ歩き、 琵琶湖を見下ろす湯に身を委ねれば、 日常から解き放たれるような、特別な時間が流れていきます。
温泉で旅を締めくくる理由
八景を巡ったあなたにこそ、 この贅沢なひとときを──。
近江八景を巡る2日間の旅路のあとは、 もう少しだけ足を延ばして、滋賀県ならではのグルメとアニメ聖地を巡ってみませんか?
文化と物語の香り漂うこの地には、 まだまだ旅人をワクワクさせるスポットが待っています。
滋賀を舞台にした青春漫画・アニメ『ちはやふる』は、競技かるたに情熱を注ぐ若者たちの成長と友情を描いた名作。原作は末次由紀による漫画で、圧倒的な画力と繊細な心理描写で多くのファンを魅了し、アニメ・実写映画化でも大きな反響を呼びました。
物語の中心となる舞台が、大津市にある近江神宮。競技かるたの聖地とされ、作中では名人位・クイーン位決定戦の会場として登場。朱塗りの社殿や静謐な境内の空気感が、物語に深い臨場感を与えています。
近江神宮は全国のかるたファンにとってまさに“聖地”であり、境内を歩けば、千早・太一・新ら登場人物たちの息づかいが聞こえてくるよう。作中の情景を実際に体感できる場所として、作品ファンには見逃せないスポットとなっています。

「実写映画『ちはやふる -結び-』ポスター。競技かるたに青春を懸けた高校生たちの最後の戦いを描いたシリーズ完結編。」
出典:映画.com『ちはやふる -結び-』作品ページ
見どころ
滋賀は、忍者文化のルーツとも深くつながる地。なかでも、滋賀を舞台にした人気漫画・アニメ『バジリスク ~甲賀忍法帖~』は、甲賀と伊賀、二つの忍者一族の壮絶な戦いを描いた名作です。原作は山田風太郎の小説『甲賀忍法帖』で、重厚なストーリーと美しい作画が話題を呼び、国内外に熱狂的なファンを持っています。
甲賀流忍術を受け継ぐ忍者たちの出身地・滋賀県甲賀市は、今も「忍者の里」として知られ、忍者体験施設や資料館も豊富。作品に登場する風景を思わせる静かな山里や城跡をめぐれば、物語の世界に浸ることができるでしょう。

「漫画『バジリスク 〜甲賀忍法帖〜』第1巻表紙。迫力ある筆致で描かれる忍者たちの宿命の戦いが、多くの読者を魅了した。」
出典
講談社『バジリスク 〜甲賀忍法帖〜』公式ページ
見どころ
滋賀県は、ポップカルチャーの世界でも存在感を放つ場所。なかでも、滋賀県豊郷町に実在する旧豊郷小学校をモチーフにしたといわれる学園を舞台にした人気漫画・アニメ『けいおん!』は、放課後の軽音楽部で青春を謳歌する女子高校生たちの姿を瑞々しく描き、社会現象を巻き起こしました。
原作はかきふらいによる4コマ漫画。アニメ化されると、登場キャラクターたちが奏でる音楽とともに、彼女たちの日常と成長を優しいタッチで描いたストーリーが多くのファンを魅了。聖地・豊郷小学校旧校舎群には、今もなお全国から聖地巡礼に訪れるファンが絶えません。
名曲『ふわふわ時間』をはじめとする劇中バンド「放課後ティータイム」の楽曲は、現実の音楽チャートでも大ヒットを記録。学園生活のきらめきと、音楽を通じた絆の深さを、リアルとフィクションの垣根を越えて感じられる作品となっています。

「アニメ『けいおん!』より、放課後ティータイムのメンバーたち。豊郷小学校旧校舎群をモデルにしたといわれる学園を舞台に、彼女たちの青春と音楽が描かれる。」
出典
画像出典:クランクイン!公式ギャラリー
見どころ
スタジオジブリの名作『平成狸合戦ぽんぽこ』。
東京・多摩ニュータウンの開発を背景に描かれたこの物語ですが、作品づくりにあたっては、滋賀県南部・信楽の狸文化や里山風景も参考にされたといわれています。
古くから信楽焼の里として知られ、狸の置物で有名な信楽。そこに広がる穏やかな里山の風景は、映画に登場する自然豊かな情景と重なり合い、物語の深みを支えています。
実際に信楽を訪れれば、タヌキたちが暮らしていたかのような、どこか懐かしい田園風景が今も広がり、失われゆく自然と共に生きることの大切さを静かに感じさせてくれるでしょう。

「スタジオジブリ『平成狸合戦ぽんぽこ』より。仲間たちと宴を楽しむタヌキたち。」
出典
画像出典:Movie Walker Press
見どころ
滋賀グルメスポット
巡礼の合間には、滋賀ならではのグルメを楽しみましょう。
近江牛
日本三大和牛の一つ、近江牛。 その歴史は400年以上、霜降りの美しさととろける食感は、 食通たちの舌をうならせています。
鮒寿司
琵琶湖の伝統発酵食品、鮒寿司。 独特の香りと酸味は、好き嫌いが分かれますが、 ここでしか食べられない貴重な味。

ビワマス
琵琶湖にしか棲まない淡水魚、ビワマス。 その上品な脂と柔らかな身質は、知る人ぞ知る絶品グルメ。

「琵琶湖の宝石・ビワマス。とろける食感と上品な旨味が魅力の寿司に舌鼓。」
出典
画像出典:公益社団法人 びわ湖ビジターズビューロー
近江ちゃんぽん
滋賀発祥の麺料理、近江ちゃんぽん。 野菜たっぷり、あっさり和風だし。 滋賀県民のソウルフードであり、旅の途中でホッとできる味わいです。
琵琶湖の湖面に映る月、 春の風に揺れる野原、 雨にけむる松、 夕陽に染まる川──
私たちが歩んできたのは、 かつて紫式部が見上げた空、 松尾芭蕉が耳を澄ませた鐘の音、 広重が筆にとらえた光と影を、 いま、この時代にもう一度なぞる旅でした。
古の人々が愛し、詠い、描いた近江八景。 そこに、現代のアニメや文化が静かに寄り添い、 新たな物語が紡がれています。
電動モビリティにまたがり、 風を感じながら湖岸を走る。 疲れを知らずに、景色を丸ごと抱きしめる。 この新しい旅のスタイルが、 過去と未来をつなぎます。
八景を巡り終えたとき、 あなたの中にもひとつ、 小さな物語が生まれているはずです。
それは、千年の時を超えて今に続く、 この土地の静かな声に耳を傾けた証。
次の旅が、また新しい物語のページを開くでしょう。 でもその前に── まずは、この旅を静かに、 心の本棚にそっとしまってください。
あなたの旅が、良き物語になりますように。
Day 1|南湖から湖西へ:石山寺・三井寺・唐崎・堅田 → 温泉でひとやすみ
Day 2|湖西から湖東へ:比良・矢橋・粟津・瀬田
滋賀グルメ&アニメスポット巡りも楽しめる2日間
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